実験計画法を自力でやってみる:①概要編

この記事で直交表の性質を調べた時から、実験計画法を記事にまとめようと思っていたのだけれど、しんどかったから延び延びになってしまった。

 

そもそも実験計画法とは何か、というと

「組み合わせ実験を水準数を、直交表を使って最小限にする手法」

となる。

例えば、樹脂・添加剤・添加量・反応温度を3点ずつ振って実験をしたいとする。

すると全組み合わせを試すには3^4=81通り試す必要がある。

一方で実験計画法では9通りと、9分の1の実験量データを取ることが出来る。

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なんでそんなことが出来るのかというのは直交表の性質のおかげで、詳細はこちらの記事を見て頂きたい。

chemstat.hatenablog.com

 

実験水準を直交表に割り当てる

実験計画法の最初は実験の水準数に合わせて、適切な直交表を選ぶところから始まる。

因子数・水準数からうまくあてはてられる直交表を選択するのだが、

・交互作用の可能性

・水準のあまりや不足

・誤差

を考え適切なものを見極める必要がある。

下はフィルム塗布時の条件として温度・速度・樹脂の種類をL9直交表を用いて検討する場合。今回は余った一列に誤差を割り当てている。

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実験データの取得

上で作った実験水準で実際に実験をしてみて結果を取得する。この時、実験を1から9まで順番にするのではなくランダムに実施するのが良い。後半の塗布ほど装置の調子が悪くなる、というような系統誤差があると、温度と交絡してしまって誤った結論を導いてしまう。

 

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各因子の影響を調べる

得られたデータについて、因子別に平均値をとって影響を調べる。

例えば100℃の時であれば1~3行目の膜厚ばらつきの平均値を、樹脂Aであれば1、6、8行目の平均値をとる。全体の平均値と比較することで、その条件によって膜厚ばらつきがどう動くかを判断することが出来る。

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全ての因子について計算したものが次のようになる。これを見ると、100℃、1mm/s、樹脂Bで塗布した時に膜厚ばらつきが最も小さくなりそうと予想することが出来る。

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分散分析

因子に誤差を割り当てている場合は分散分析をすることが出来る。

それぞれの残差平方和からF検定をし、有意かどうかを判断する。

厳密な検定が不要で、大体どの程度が有意かという範囲が分かっているようであればやる必要はない。

というのが大体の流れになる。

結果を重回帰分析して予測式を作ってみてもよい。重回帰を自力でやりたいようであれば下記の記事をどうぞ。

chemstat.hatenablog.com

 

ということで、次回からはこの実験計画法を順に説明していきたいと思う。

参考

Rで実験計画法 後編

実験計画法入門 Part 2