GR&Rを自力でやってみる:①概要編

製品を作る上で製造安定性の改善は永遠の課題である。ひとたび製品化が決まれば、原料の管理や製造プロセスの改良を繰り返し、安定的に製造する方法の模索が始まる。

一方で、いくら安定的に製造していたとしても、それを評価する手法のばらつきが大きいと、製品のばらつきを適切に評価できない。

製品自体のばらつきと評価系のばらつきを分離し、評価系の精度が十分かを議論する方法としてGR&R(Gauge Repeatability & Reproducibiilty)というものがある。今回の記事ではGR&Rの概略を説明したいと思う。

 

 GR&Rを実際に実施する際は、下図のようなデータを取得する。

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①異なる製品ロットを

②異なる測定者で

③繰り返し測定

することによって、下図のような3つのばらつきの成分に分離する

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PV (Part Variation):製品ロットのばらつき。

EV (Equipment Variation):測定装置によるばらつき

AV (Apparaiser Variation):測定者の違いによるばらつき

 

分散には加法性があるので総分散TV (Total Variance)と下記のような関係になる。

TV^2 = PV^2 + EV^2 + AV^2

ちなみに測定装置や測定者のばらつきとなっているが、実際にはばらつきそうな要素を割り当てることも出来る。この辺は次の実験計画の記事で紹介する。

 

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そして、下記の%GRRという指標を使って測定手法のばらつきを評価する。

\begin{align*}\%GRR=\frac{EV+AV}{TV}\end{align*}

ここで注意が必要なのは、GR&Rの計算は分散そのものの\sigma^2ではなく、標準偏差\sigmaで行っているという事である。

標準偏差には加法性がないので、%PV+%EV+%AVが100%にならず若干気持ち悪い。

 

大体の目安として

<10%:OK

10%~30%:場合によっては許容

>30%:NG

と言われることが多い。実際にはこれは分野によっても変わるので、似たような事例での適用例などを踏まえて判断する必要がある。

 

ちなみに%GRR=10%と30%の時のばらつきはこんな感じになる。

次回は平均値-範囲法とANOVA法について説明したいと思う。

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chemstat.hatenablog.com

参考

GR&Rの原理を理解してから使って! | 進化するガラクタ