前回は手法の話だったが、今回からはGR&Rの具体的な手法について解説する。この記事ではデータ取得の為に何が必要かを説明していく。
①評価する製品を準備する。
ここで評価する製品はランダム抽出ではなく、恣意的に選ぶことが推奨されている。
製品のばらつきが大きすぎると、測定系のばらつきが見えなくなってしまうし、
ばらつきが小さすぎると、%GRRの値が大きくなりすぎてすべてNGになってしまう。
例えばスペックの上端と下端、製造プロセスで生じうる最大と最小の製品等、自分たちが評価したい内容に合わせて製品を選ぶのが良い。
②異なる測定者ですべての部品を測定する。
「測定者」と言われているが、これは昔の部品の計測が人の手によって行われていたからで、最近では機械でボタンを押すだけ、という事も多いと思う。
例えば異なる測定機を割り当ててもよい。
③この測定を2回以上繰り返す。
これにより繰り返しのばらつきを評価するのだが、日間差・温度・湿度等ばらつきそうな項目が全部入るように実験を組むのが良い。
例えば同じ日の同じ時間に2回の測定を行ってしまうと、同じ環境で測定されてばらつく要素を減らしてしまうことになりかねないので、
1回目と2回目で測定日を変える、温度や湿度が変わりそうな場所で測定する、昼と夜に測定をして温度が違う環境で測るといった工夫をして、実際のばらつきを再現できるようにしたほうが良い。
どんな要素が測定に影響を及ぼしそうかを把握している必要があるので、この辺は経験がものを言うところである。
④データ解析
集めたデータを平均値-範囲法、ANOVA法で解析する。
計算で出てきた%GRRの値を下記の基準に照らし合わせて、OK、NGを判断する。
<10%:OK
10%~30%:場合によってはOK
>30%:NG
計算方法は次回以降で説明したいと思う。
これにてGR&R自体は完了である。
しかし本題はこれからで、もし評価系がNGならばらつきの原因を見つけて改善が必要があるし、過剰に測定精度が高いのなら、効率化するという選択肢もある。
ちなみにサンプルばらつきの影響
言葉だとわかりにくいのでサンプルのばらつきが異なる場合でのGRR結果を計算してみた。
以下のような基準で10個のサンプルを以下の基準で抽出ししたとする。
ばらつき中(10±2、スペックギリギリ)
ばらつき小(10±0.4、スペック余裕)
ばらつき大(10±8、スペックアウト)
人のばらつきと、繰り返しのばらつきがどのサンプルでも±0.5だったとして、GR&Rのデータを取るとこうなる。
評価のばらつきは同じはずなのに、%GRRの値は大きく異なってしまい、サンプルばらつき大だと%GRRは1%とすさまじく精度が高いことになってしまう。
そもそも製造がそんなにばらついてるならまずそちらをなんとかしてから評価系を改善すべきなのだ。逆に歩留まりは無視でとても悪いやつだけ弾ければいい、という考えならこの系でもいいことになる。そんな製品があるのかは知らないけれど。
大事なのは%GRRとはあくまでサンプルと測定系の相対値だという事を認識しておくことだ。
今回はこの辺にして、次回からは平均値-範囲法の計算について解説する。