前回、傾き共通モデルを作成できたので、今回ようやく平行性の検定を行うことが出来る。
平行性の検定では、帰無仮説「すべての回帰直線の傾きが等しい」ことを検定数するため、「傾き共通の回帰式の残差平方和」と「個別の回帰式の残差平方和」の残差を比較することになる。
もし傾きが本当に平行であれば、個別に求めた回帰式と、傾き共通モデルで求めた回帰式は等しくなるはずで、そうなれば当然残差の値も等しくなる。
なので残差平方和の差分が個別回帰式の残差平方和に対して、有意に小さければ、二つの回帰式は等しい(=傾きが平行である)と言えそうである。
実際のF検定に際しては残差平方和を自由度で割った平方平均を用いる。平方平均は「残差がどれだけばらついているか」に相当するが、この辺は回帰分析のF検定と同じような理屈である。
ちなみにこのが残差の差分の不偏推定量になるかは分からなかったのだけれど、だれか教えてほしいです。
大体の理屈はここまでにして、実際の計算に移っていこう。データは以下である。
データ1
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
2 | 6 | 6 | 9 | 6 |
データ2
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
0 | 4 | 4 | 3 | 6 |
データ3
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
3 | 5 | 7 | 9 | 7 |
残差平方和の計算
傾き共通の回帰式と、個別で求めた回帰式は前回導いた式を使用する。
全データやるのは大変なので今回はデータ1のみ計算してみる。
それぞれの回帰式を用いてを求め、実際のデータとの残差を各データ点について計算する。
データ1の傾き共通式の残差平方和:
データ1の個別の回帰式の残差平方和:
これをすべてのデータについて行って、残差の合計を計算する。
傾き共通式
残差平方和:
残差の自由度:データの総数-回帰式の自由度
傾きが共通の場合、回帰式が3つあっても、1種の傾きと3種の切片になるので、回帰式の自由度の合計は4である。
個別の回帰式
残差平方和:
残差の自由度:データの総数-回帰式の自由度
こちらは回帰式が3つに対して、切片と傾きがそれぞれ異なるので、回帰式の自由度の合計は6になる。
傾き共通性のF検定
ここまでくると、ようやくF検定に必要な平方平均を求めることが出来る。
「残差の差」の平方平均:
「個別回帰式の残差」の平方平均:
そしてこの平方平均を用いて「傾きが共通である」ことを帰無仮説としたF検定を行う。
自由度、のF値4.25に対して小さいので、「傾きは平行である」と言える。(厳密には「傾きが平行である事は否定できない」と言える。)
定義上、分子が分母より大きいときに棄却が否定されるという、片側検定なので注意が必要である。
補足
改めて残差の比較をグラフにすると下記のようになる。
平方平均は「ばらつきのばらつき」的な値で、それを比べることでF検定を行うことが出来る。傾き共通の残差そのものではなくて、その差分が使われていることに注意したい。
今回で傾きが等しいことが分かったので、次回は切片の差を検定する。
参考
傾き共通モデルの計算:https://scientist-press.com/wp/wp-content/uploads/2019/07/seminar3.pdf
共分散分析の解説:http://www.snap-tck.com/room04/c01/stat/stat13/stat1302.html