共分散分析(ANCOVA):回帰直線間の有意差について検定する

回帰分析を用いることで、ある特性間の関係式を得ることが出来る。実験条件を変えた時にこの関係式に変化があるか、という評価は化学分野に限らず日常的に行っていると思う。

例えば添加剤量と表面粗さを評価した時、添加剤Aと添加剤Bでその傾きや切片に差があるのか、といった評価が想定される。

 

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今回はこの回帰直線の差を共分散分析(ANCOVA)を使って検定する。

 

共分散分析の概要

共分散分析は、ある性能yの群間差を評価する際に、yに影響を及ぼすもう一つのパラメータxの影響も考慮に入れた分析方法である。平たく言うと得られた複数の回帰直線について、次の三つの検定でその回帰が等しいかを検定する。

①傾きが等しいか(平行性の検定)

②パラメーターに意味があるか(回帰の有意性の検定)

③切片が等しいか(群間差の検定)

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統計ソフトを用いればすぐに結果が返ってくるのだが、実際にどうデータを処理しているのかを調べてみると意外とややこしかったので、備忘録がてら一つずつまとめていきたいと思う。

データの準備

 まずは分析に使うデータを準備する。2つ以上のデータでも検定できるので、今回は3つデータを用意してみた。

データ1

 x 1 2 3 4 5
 y 2 6 6 9 6

 データ2

 x 2 3 4 5 6
 y 0 4 4 3 6

 データ3

 x 0 1 2 3 4
 y 3 5 7 9 7

 プロットするとこんな感じになる。

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それでは次回から傾きの平行性について解説していく。